米金利の動向は要注意。

先週のセミナーでも話しましたが、昨年から今年にかけての米金利の話は要注意です。

通常、リスクオン(リスク選好)で株価が上がると、債券が売られて債券利回り(金利)が上昇します。逆に、株価が下がるとリスクオフ(リスク回避)で債券利回り(金利)が低回します。したがって、為替市場ではリスクオン(又は金利上昇)になればドルが買われて、円が売られ円安になり、逆にリスクオフ(又は金利引下)になればドルが売られて、円が買われて円高になります。

この「通常」という最初の言葉が大事で、通常でなければこうした動きにはならない時もあるということを理解しておいてください。

米FRBは米景気の順調な回復と労働市場の拡大に伴い、一昨年から5回の利上げを行っており、今年も3回合計0.75%の利上げが見込まれています。

「通常」であれば、景気拡大や労働市場の拡大・賃金上昇に伴うインフレを抑えるべく、緩やかに金利を上昇させることは中央銀行家としては理に適っている行動でしょう。また、市場も過度な利上げよりも株価や景気動向を見ながらの緩やかな利上げを歓迎しているように思われます。

しかし、今、米国で起きていることをきちんとした理解すると、今が「通常」ではないことがわかります。

米財政は2008年のリーマン・ショック直後から急激に悪化しており、2009年度の赤字幅は1.4兆ドルと国内総生産(GDO)比で10%弱にまで膨らんだ。現在、米政府総債務残高(いわゆる累積債務)は2017年の、約20兆ドル(約2,200兆円)と推計されている。こうした中、トランプ政権が大規模な減税策を実施し、大規模なインフラ投資を行うことで、1兆ドル以上の財政赤字が拡大すると予測されていることです。

「財政赤字の拡大」

恐らくこいつが問題です。

ドル円だけの世界を考えて、このテーマを考えましょう。

米FRBによる利上げ、「通常」であればドル高を招くはずです。

しかし、現実はドル安になっています。

WHY???

不思議ですね。

この理由がわからないと、相場で勝つのは難しいでしょう。

通常は金利が上昇すると、債券の価格が下落して、利回りが上昇するので、米金利の上昇はそのまま米債価格の下落を意味しています。

したがって、既存の米国債券投資家からすると、米金利引上は、米国債の資産残高が目減りすることを意味しており、できるだけ早く米国債資産を減らそうとします。その結果、米国債価格が下落し、米国債利回りの上昇、つまり、金利上昇へとつながります。そして、「通常」であれば、米債価格の下落に伴い、今度は値頃感から新たな買い手が米国債投資を行い、金利が上昇に歯止めが掛かってもおかしくないはずなのですが、米財政赤字が今後さらに拡大すると予測される状況では、現在の金利水準で新たに米国債投資を増やそうとする投資家が多くない可能性があり、米国債離れが進行してドルが売られていると考えられます。

簡単に箇条書きですが、米金利上昇要因と低下要因を示しておきます。:

米金利上昇要因:
・米FRBが2017年10月から米国債やMBS等への債券再投資を縮小させていること。
・米国債の最大保有国である中国が米債投資の手控えや売却を示唆するかも知れないこと。
・米労働市場での賃金上昇圧力とインフレ期待の上昇圧力の拡大。
・米通商政策の保護主義化。
・為替取引におけるヘッジコストの上昇。

米金利低下要因:
・米景気の先行き懸念が台頭
・インフレ期待の沈静化
・保護主義の緩和

まだまだあるかも知れませんが、こうやって考えると、米金利の低下要因はとても少ないと思われますし、米金利上昇要因がドル高を招くとは想定し難いです。さらに、米商務省が3月7日に交渉した1月の米貿易収支では、赤字額が566億ドルにも達し、2008年年10月以来約9年ぶりの高水準となったことから、経常収支赤字に対する懸念が生じており、ドルが売られ易いかも知れません。

もちろん何らかの大規模な経済ショックが起きれば、リスク回避のドル買いが生じる可能性もあるので、その場合でもドル円で考えると、円高へ向かう方向性に変わりはないと思います。

3月20日・21日で開催されるFOMCでの0.25%の利上げは想定済みですが、 今週の3月13日に公表される2 月の米消費者物価統計(CPI)次第で、 FRBがインフレを警戒するレベルを引き上げ、今後の利上げ見通しも変えるかも知れず、 今後の米金融政策の方向性が変わるかも知れませんので要注意です。

追記:

米労働省が公表した2月の米消費者物価指数(CPI・季調済)は、前月比0.2%上昇となり市場予想通り。また、前年同月比2.2%上昇となりこちらも市場予想通り。食品・エネルギーを除いたコアCPIも前月比0.2%上昇となり、前年同月比も1.8%上昇でこちらもは市場予想通り。

CPI(前月比)

CPI(前年同月比)

出所:Econoday, Consumer Price Index

 

 

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