原因と結果、米金利上昇と延滞率上昇

経済学の研究を少しはしてきた者として、少しは真面目に経済事象を捉えないといけない。

米金利上昇の影響が実体経済にどのような影響を与え、その結果として米経済がどのような方向に向かうのかとか、米資産市場がどのような方向へ向かうのかとか、少し時間軸を長くして考えてみて損は無いかなと思う。

個人的に注目しているのは家計部門の債務情報で、特に旧宅ローン等の「延滞率」。

サブプライム・ショック(まぁ、リーマン・ショックでも良いけど)の時にその兆候を見つけることができた人が大金を得たことは、実話をベースにした映画「マネー・ショート」を見れば簡単にわかる。

その時最初の兆候に気付いた投資家達が注目したのも、住宅ローン等の延滞率であった。

2017年11月26日のロイターに面白い記事が掲載されていた。

ロイター, コラム:薄氷の米経済、FRB利上げ慎重でも自滅のリスク

『ロンドン大ゴールドスミス校の経済学上級講師、ジョンナ・モンゴメリ氏は、FRBが今試みているのは2004─06年と同じ「皿回し」だと手厳しい。金利を徐々に引き上げることで、経済成長のエンジン役を果たせる程度に家計債務が増え続けることを望んでいるという。』

私は何度も他のレポートで警笛を鳴らしている。

金利引上は時限爆弾のスイッチだと。

思い出して欲しいこと。

2000年にITバブルが崩壊して、2001年にはNYで多発テロが起き、2002年にはエンロンの不祥事と続き、米国経済は大幅に景気が後退した。その時のFRBは2000年には6%だった政策金利を、当時の下限1%台にまで下げました。金利を下げて景気を回復させようとした訳ですが、その低金利が住宅市場をバブル化させた。

強欲な金融マン達は、あたかもリスクを上手に外しているかのような金融商品を開発し、それらが市場へ氾濫し始めました。例えば、MBC(住宅担保証券)やCDO(債務担保証券)が大量に組成され、投資家はこぞってMBSを購入しまくった。こうして需要が需要をさらに呼ぶバブル状態になり、金融機関は2004年頃からは支払い能力の低い層へも積極的に貸出(サブプライムローン)を増やしては、リスクを上手に外したかのように見える金融商品を組成しては販売することを繰り返した。

しかし、2004年6月頃からFRBが今度は金利を緩やかに上昇させ始めると、状況は一変し始めた。

サブプライムローン層の人々、つまり、支払い能力の低い人々から破綻が生じてきたのだ。

破綻した人の家は競売に掛けられ、中古住宅市場は供給過剰に陥り価格は伸び悩み、当然ながらキャピタルゲインも望めず、次第にサブプライムローンのみならず住宅ローンの破綻も増え始めました。2006年5月には金利は5%となり、その後は2007年8月まで5.25%で推移しました。金利引上は破綻を連鎖させ、サブプライムローンや住宅ローンの不良債権化が進行し、その結果MBSの価値が毀損し始めました。波及は波及を呼び、MBSや貸付債権ベースとした組成されたCDOやCDSといった金融派生商品の価値が著しく毀損し、皆さんがご存知のリーマン・ショックへとつながっていったのです。

残念ながらまた同じことが起きようとしていると私は考えています。

昨年2017年の8月にはこんな内容のレポートを書きました。

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小さなニュースですが、ん?・・・と思わないといけません。

ロイター, 4-6月米家計債務が過去最高更新、クレジットカード延滞上昇

『米ニューヨーク連銀が公表した第2・四半期(4-6月)の家計債務残高は前年同期比5520億ドル増の12兆8400億ドルとなり、過去最高を更新した。金融危機により落ち込んだ水準からは約14%拡大している。

債務の返済延滞は4.8%で、前四半期から横ばい。ただしクレジットカードの延滞は上昇が目立ったという。

債務の内訳では、住宅ローンが3290億ドル増の8兆6900億ドル、学生ローンは850億ドル増の1兆3400億ドル、自動車ローンは550億ドル増の1兆1900億ドル。』

まだまだ大丈夫そうですが、サブプライム・ショックを経験しているので、私は延滞のわずかな変化を注視しています。

だから何気ないこうしたニュースは大事です。

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注意しなければならないのは住宅ローンの延滞率だけでなはいです。自動車ローンの延滞率だって重要なので、昨年11月15日の記事もBig Shorttの波が来るとして、要チェックしていました。

Bloomberg. 米ノンバンクのサブプライム自動車ローン延滞、危機時の水準近くに

今年2018年の2月にはこんな記事も別のところで投稿しました。

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利上げの期待の一方で、気になるニュースが公表されている。

MBA, Delinquencies Increase in Fourth Quarter from Ten-Year Lows, Foreclosure Starts Continue Decline in Latest MBA Mortgage Delinquency Survey

延滞は増加、差し押さえは低下している・・・何だ???

先延ばし大作戦ですね(^_-)

でも、ここは延滞に注目しましょう。

利上げには様々な副作用があります。私は以前から金利上昇のリスクを警告してます。以下のグラフを見ると、30年の住宅ローン金利が上昇する一方で、延滞が7年ぶりの高さになり、上昇の兆しが伺えます。

延滞推移

30年住宅金利と延滞との相関

出所: Zero Hedge, Mortgage Delinquencies Rise Most In 7 Years As Rates Spike

もちろんリーマン・ショックの時と比較すると、かなり低いので、金融危機の「前兆」や「兆し」かどうかの判断を現段階で行なうのは非常に難しいですが、頭の片隅に置いて置いてください。インフレ抑制、金利引上げを繰り返すとどうなるであろうか。インフレが進んで実質賃金が低下すると、人々の生活は苦しくなる。当然住宅ローンの支払いが滞り始める…再び、そして前回よりも強力な金融危機が起こる。リーマン・ショックの時を思い出せば答えは簡単だ。

この数字のわずかな変化がその兆候を示しているのか、いないのか、今後の動向は要注意。

喉元過ぎれば熱さを忘れる。

Greed is Good???

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そして、つい先月の3月にもこんなレポートを別のところで書いています。

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要注意なデータ。

Bloomberg, 米家計の負債、第4四半期に2007年以来の大幅増-資産は引き続き拡大

『米連邦準備制度理事会(FRB)が8日発表した統計によると、米国の家計負債は昨年10-12月(第4四半期)に現在の景気拡大期では最高のペースで拡大した。一方、株高を背景に資産は引き続き増加し、最近の強い個人消費の背景にある要因が鮮明になった。』

家計全体で見れば借金して株を購入しているような感じか。

『家計債務の増加は、FRBが既に発表している消費者信用の年7.8%増、住宅ローン借り入れの年3%増加を反映している。』

消費者信用と住宅ローン借入の増加は延滞に注目しないといけない。

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私は既に警告していたので、このニュースを見てむしろ「当然だろ」と思った。

Bloomberg, 金利上昇、多額債務抱える米消費者に警鐘-好景気持続の負の側面

やはり要注意と確信している。

 

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