米ドル高と新興国通貨(1)

毎週月曜日にその週のドル円の予想を立てていますが、そこに気になるトピックスを掲載するようにしている。

先週は米長期債利回りの上昇に伴うドル高と新興国通貨の下落に関するニュースを取り上げた。

おさらいをしておこう。

金融取引は価格差があればその差を埋めるような金融取引が生じる。

サブプライムショック以降、米FRBなどを筆頭に各中央銀行は大規模な量的緩和を推進してきた。特に米FRBの影響は甚大であったが故に、投資家は安い金利の国で資金(米ドル)を調達し、高金利の国(新興国)で運用を行ってきた。

しかし、米国が金融正常化へ舵を切り始めたことで、この流れの逆が生じつつある。

つまり、新興国通貨を売って、米ドルを買い戻す動きだ。

この一連の動きがいろいろ世界経済へ悪戯をする訳だが、その悪戯が及ぼす影響について、実務家と学者等の間で見解の相違があるのが面白い。

僕は個人的に金融の歴史(チャートも含めて)を大事にする。

だから僕はこう記した。

『今後数年で何が起こるのかを正確に予測することはできないが、どんなリスクが待ち構えているのかを何となくだけど予測しておくことは決して悪い事ではない。

ロイター, 焦点:ドル高再燃で新興国市場に激震、利下げ局面と債券上昇に幕

ロイター, 焦点:「ゴルディロックス相場」が変調、米金利上昇でマネー逆流

備えあれば憂いなし。』

今から20年以上も前の話だが、僕がインベストメント・バンカーになりたての頃、キャピタル・マーケツの部署に所属していた。その時にアジア通貨危機を経験し、ロシア危機やLTCMの破綻も経験した。特にアジア通貨危機とその後の暴動の直後にインドネシアの首都ジャカルタに入り、24時間体制でボディ・ガードに守られながらホテル暮らをしながら、不良債権をバルクで仕入れていた経験があるので、今回のドル高とそれに伴う新興国通貨安の動きにはかなり警戒している。

そんな中でこんなニュースが出た。

Bloomberg, 「テキーラ危機」当時とは違う-新興市場が動揺してもアジアは大丈夫

『1990年代半ば、米国の金利上昇がメキシコ通貨ペソの切り下げを誘発。これにより資本逃避に拍車が掛かり、いわゆる「テキーラ危機」を招いた。そして数年のうちに売りはアジア地域へ広がり、新興国市場の危機の中心地となる。同域内の経済は急激に悪化し、複数の通貨が切り下げられた。そこから2018年まで早送りすると、歴史は繰り返すように中南米で危機が醸成されている。ドルと米国金利が上昇する中、アルゼンチンは緊急資金の確保を目指している。』

こうした動きは20年前の出来事を彷彿とさせるのだが、前回とは違うと主張する奴がおる。

『もっとも、今回に関してアジアは危機の波及に当時ほど脆弱(ぜいじゃく)ではないと、マッコーリー銀行の債券・外為戦略責任者、ニザム・イドリス氏(シンガポール在勤)はみる。中南米に端を発する足元の不安はテキーラ危機を思い起こさせるものの、今日の「アジア経済はかなり強くなっている」と指摘する同氏は、「経常赤字は実際に小さく、外貨準備は以前に比べはるかに高水準で、通貨は変動相場制へ移行している。今の状況は95年当時と全て同じではない」と説明した。』

確かに全ては同じではないが、全てが同じではないから前回と違うと言い切れるほど経済は単純ではない。そもそもアジアの国の多くは小国だってことを忘れてはいけない。

国際経済学では、小国が関税や輸入制限等の規制が自国へ経済損失を生むことが知られている。その結果、自由貿易は小国にとって利益をもたらすと考えられている。しかし、実際の貿易には相互に様々な規制が儲けられており、話はそう簡単ではない。特に相手がアメリカのような大国ともなれば貿易に関する規制次第では小国は大きな損失を被る可能性が高い。実際、トランプ大統領はアメリカの利益を考え、貿易不均衡を無くすべく様々な規制を課そうとしてる。そうなると経常収支が黒字だから大丈夫だとかという話ではなくなり、前回と同じような事態に陥るかも知れない。』

僕個人としては警戒感を強めているのだが、マーケットは常にイケイケなので、困ったもんだ。それなりの経済学者が警鐘を鳴らさないといけないのではないかと思っていたら、本日ハーバード大学のラインハート教授のこんなニュースが出ていた。

Bloomberg, 新興市場の状況、08年の金融危機当時よりも悪い-ラインハート氏

『ラインハート氏は「各国が置かれた全般的な状況を見ると、5年前よりもずっと多くの問題を抱え、世界的な金融危機の当時より深刻なのは確かだ。内外いずれにも症状がある」と述べた。同氏が挙げた新興市場の問題点は次の通り。』

アジアとの関係で個人的に気になる問題点だけ取り上げる。

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米国のインフレと新興市場株との関係:

インフレ問題の本質は金利の問題であり、米国の金融政策対応への含意だ。「引き締めの度合いが大きくなれば、金利はさらに上昇するとの見通しが広がり、新興市場には何倍もの影響が及ぶ」

・「米国の政策が一段と引き締め状態となり、他の先進国・地域がそれに同程度追随しなければドルは上昇する。そこでダブルパンチが生じる」

新興市場国の通貨にどんな影響があるかも重要。新興市場債務の3分の2余りはドル建てだ

新興市場の脆弱性:

・新興市場が先の金融危機後に急回復した重要な要因の1つは、当時は各国がほとんど対外債務を抱えていなかったことだ

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歴史は繰り返すからね。

僕が20年ほど前にジャカルタ入りした時は、建設途中で放棄された高層ビルが100本v近く見られた。当時のざっくりとした計算で、1棟の高層ビルを建築するのに100億円として、100本だから1兆円が不良債権になっていると予測していた。実際、通貨危機の際に世銀が第一弾目に準備した金額は230億ドル程度なので、我々がざっくり計算した1兆円程度の不良債権も間違いではなかったことになる。正確な数字を把握していないが、確か当時のダイエーの有利子負債が1兆円を超えていて、そのほとんどが不良債権化しており、ダイエー1社の借金でインドネシアという国の経済が破綻するんだと思ったことは確かだ。

国の経済規模で優劣は付けないが、国の経済規模で何が起こるかを予測しておくことはやはり重要だと思う。

最後に少し古いレポートだが、今後を予測する上で役立ちそうなので、みずほ銀行のレポートを掲載しておきます。

みずほ総合研究所. インドネシアの対外債務構造

どうだろう?

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